粘膜人間

『粘膜人間』飴村行〈角川ホラー文庫
第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
珍しく日本人作品。
珍しくもなくグロ。

利一と裕二の弟、雷太は10歳にして身長195cm、体重105kgと言う巨体に残酷な性格を持ち、父親さえもその暴力の対象にされていた。為す術のない二人は、村はずれに棲むある三兄弟に雷太の殺害を依頼する。彼らはそれと引き替えに、女を紹介しろと言った来た。利一たちは非国民として村八分にされている清美をあてがうことにするのだが……

登場人物全ての倫理観が壊れ、人も世界も狂っていて、戦時中の混沌だからこそなんでもアリ……という境地に至るには、まだ説得力が足りないものの、そんなことより雷太が凄すぎて笑える。そのパワーは圧倒的で、引っ張られるようにしてさくっと読了。
人間の破壊描写は友成純一を彷彿とさせるんだけど、個人的には挿絵が水木しげる(笑)
また、題名が往年の東宝特撮映画を思い起こさせるけど、ラストも怪獣大決戦っぽくていいなぁ。