CONGO JOURNEY

コンゴ・ジャーニー』レドモンド・オハンロン〈新潮社〉

冒険家(?)レドモンド・オハンロンは、全財産をつぎ込んでコンゴにやってきた。その目的はピグミー族に出会い、そしてテレ湖に潜む怪獣、モケレ・ムベンベを探すこと。同行するのは大学時代の友人ラリー、怪獣を見たことがあるという地元の生物学者マルセラン、そしてマルセランの親戚であるヌゼとマヌー。しかし、ラリーとは20年ぶりの再会、マルセランは女好き、ヌゼとマヌーはイマイチ信用できない。一行の前にはきびしい自然が広がり、さらにはマルセランの命を狙う村も……。はたして、レドモンドは怪獣と出会えるのか!?

川→密林→病気→賄賂→呪術……のローテーション。
自然も社会も人々も、まるで違う全くの異世界で、信じられないような出来事の連続のノンフィクション。
どこに行くにも賄賂が必要で、それが潤滑剤となっている。しかし、それ以上に場を支配しているのは呪術。呪い師は敬われ、様々なタブー、名前を口にするのもいけないもの、が満ちあふれている。レドモンドはなかなか彼らのメンタリティが理解できず、失言をしばしば。
面白いのがマルセランで、彼はフランスの大学で学び、コンゴの役人でもあるが、呪術や禁忌は常識として染みついており、いつもは自信にあふれているものの、呪術の前では怯えてしまう。
さらに、後半、レドモンドの前にも精霊が現れ始める。
起こったことと信じることは別。密猟と保護、白人社会とアフリカ、キリスト教と土着信仰、人間と森、決して他方が他方を批判することはできず、様々な狭間の物語。
ある意味、リアルなマジック・リアリズム
ラストも、失敗とかそういうのとは違う苦さがあり、ただの冒険紀行文ではない、違う世界を見せてもらえた。