TAP and other stories

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『TAP』グレッグ・イーガン河出書房新社 奇想コレクション
日本オリジナル短篇集。全篇初訳。贅沢!
イーガンの著作、随一のゆる表紙(笑)

 収録作品
・「新・口笛テスト」Beyond the Whistle Test
・「視覚」Seeing
・「ユージーン」Eugene
・「悪魔の移住」The Demon's Passage
・「散骨」Scatter My Ashes
・「銀炎」Silver Fire
・「自警団」Neighbourhood Watch
・「要塞」The Moat
・「森の奥」The Walk
・「TAP」TAP

どちらかと言えばSF寄り作品の作品が多い奇想コレクションだけど、ガチガチハードSFのイーガンが入るのはどうなのかな〜、と思っていたら、(イーガンにしては)なかなか異色作品が並んでいました。
ただ、いつもなら「もっとツッコムのに!」というか、追求する手前で物語をまとめる方向に持っていく印象。


個人的お気に入りは、


・「新・口笛テスト」
一度聴いたら忘れられないフレーズを作り出した会社。それをCMに使うと、商品の売り上げが一気に増加。しかし、それを見いだした広告マンは、何をやっても耳から離れなくなり、聴覚以外にも影響が……
一番『世にも奇妙な物語』っぽい話かな?
分かりやすいし、オチも予想どおりなんだけど、理屈はイーガン(笑)


・「視覚」
世界的な映画会社の社長。暗殺で頭に銃弾を受けたが、手術によって一命を取り留める。しかし、目が覚めると、まるで幽体離脱したかのような視界。この症状は?
どういう方向に行くのかと思っていたら、ラストはなんか笑っちゃいました。


・「散骨」
連続殺人鬼に魅入られたカメラマン。折しも地元では、子供達が相次いで行方不明になっていて、彼はそれを追っていた。ある晩、彼の部屋に奇妙な男が現れる。
イーガンのホラー。
ある意味、未来への扉を開いてしまう物語。『FROM HELL』とちょっと似てるかな?


・「銀炎」
触れただけで伝染し、いまだ治療法のない疫病“銀炎”。それが発生し、その感染経路を調べるために現地へ飛んだ女性学者。彼女は、感染者が〈村〉で行われたイベントに参加していたことを突き止めるが……
ラストのもどかしさというか、やりきれなさというか、最初からこちらに敵意のない敵との、勝ち目のない絶望的な戦い。


・「森の奥」
殺されるために銃を突きつけられて森を歩くプログラマー。なんとか助かろうとするが、とりつく島もない。しかし、殺し屋は、殺されるのが納得出来るためのインプラントを差し出してきた。生き残るチャンスを得ようと、それを受け取るが……


ある意味、全部ホラーと言えなくもない?
ただ、不気味とか、生理的嫌悪感とは違う、もっと深いけど部分が違うネガティヴな感覚。「TAP」に出てくる「頭にTAPを入れるのはぞっとする」というような文章が全てを表している気がする。


次は来年の夏、『跳躍者の時空』が予定。
それにしても、奇想コレクションももう5年か〜