POACHERS

密猟者たち (創元コンテンポラリ)

密猟者たち (創元コンテンポラリ)

『密猟者たち』トム・フランクリン〈創元コンテンポラリ802-12〉
(ごく)一部で話題だったので着手。

 収録作品
・「グリット」 Grit
・「シュブータ」 Shubuta
・「トライアスロン」 Triathlon
・「青い馬」 Blue Horses
・「デュアン・フアレスのバラード」 The Ballad of Duane Juarez
・「小さな過去」 A Tiny History
・「ダイノソア」 Dinosaurs
・「衝動」 Instinct
・「アラスカ」 Alaska
・「密猟者たち」Poachers

地方の寂れた工場や住宅地を舞台にしているのがわかっているのに、まるで野生に生きる部族の物語を読んでいるかのよう。
けっこう血なまぐさく、グロテスクで、排煙が臭ってきそうなのに、森と霧が全てを覆い尽くし、清冽な読書感。基本的にダメな人が主人公なんだけど、それを楽しむ余裕もないほどの緊張感。
野生児のような無法者の密猟者三兄弟と伝説的な狩猟監視官の戦いを描いた表題作は素晴らしく、超自然を描いてるわけでもないのに、蛮人と大自然の伝説を読んでいる錯覚に陥る。はっきりと描写されているわけでないのに狩猟監視官の存在感は圧倒的。個人的には『ミサゴの森』と匂いが被った。
他には、「ダイノソア」「衝動」がお気に入り。