El OBSCENO PAJARO DE LA NOCHE

夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

夜のみだらな鳥 (ラテンアメリカの文学 (11))

『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノーソ〈集英社
読むのにえらく時間がかかった……

植民地時代からの名門アスコイティア家に、待ち望まれていた嗣子《ボーイ》が誕生した。だが、その子はふた目と見られぬ崎形だった。奇妙な彫像や異様に剪定した倭木、国中から集められたあらゆる類の不具者で埋まり、美と醜が完全に逆転した屋敷が《ボーイ》のために用意される。その管理を委ねられた秘書ウンベルトは、塔に寵って主人ドン・へロニモの伝記の執筆にとりかかるが、ある日、胃疾のために大吐血。異形の住人が提供した血で一命を取り止めるが、そのため、自らも異貌のものに変じた彼は、屋敷を捨て、修道院に逃げ込んだ……。そこは、救世主の再来を渇望する住人たちのグロテスクで怪奇なゴシックロマンの世界。…

上手くまとめられそうにないので、あらすじは帯から引用。
というか、これ通りの展開なら自分でもなんとかなりました(笑)
確かに、あらすじ自体はこういう感じ。フリークスを集めた屋敷の様子は『BATMAN : FACES』を思い起こさせる逆エデン。ただ、文章が一筋縄ではいかない。
文章はウンベルトの独白からなっているものの、それがわかっていてさえ、「いつ」「どこ」で「誰」が「誰」と「誰」を話しているのか混乱してくる。“信用できない語り手”なんだろうけど、その視点も存在も意識も信用できず、妄想なのか現実なのか、作中作に過ぎないのか、時間も空間も無意味なグロテスクな屋敷と修道院を舞台にして、さらに独白さえも時間と空間を無視する。実際、作中でも「時間を重ねあわせたり混乱させたりする力がそなわっている」「呪縛された現在」と言う文章が語られ、過去と未来が繰り返し語られ、はっきりとしない現在が延々と続く。
しかし、やはり文中で予言されているように、救世主が生まれないため、彼らの世界は崩壊する。
また変身譚でもあり、顔の交換、破壊によって、時間と空間を無視できる普遍的な語り手となる。夜のみだらな鳥であるチョンチョン(でいいのか?)で、それもまた顔だけの妖怪。そして、物語が終了するとき、ウンベルトの顔も袋に覆われ、存在を消されてしまう……
まぁ、ない脳みそで解釈しようとしてもしょうがないので、グロテスクな文章と内容で酔えただけでも、一読の価値あった。