A MODEL WORLD and Other Stories

モデル・ワールド (Hayakawa Novels)

モデル・ワールド (Hayakawa Novels)

『モデル・ワールド』マイケル・シェイボン早川書房
先月の「大森望のSF観光局」で言及されていて、そそられたので着手。

収録作品
・「S ANGEL」 S ANGEL
・「海岸通り」 Ocean Avenue
・「モデル・ワールド」 A Model World
・「ブルーメンタール、放送中」 Blumenthal on the Air
・「スモーク」 Smoke
・「億万長者」 Millionaires
・「小さなナイフ」 The Little Knife
・「人間以上」 More Than Human
・「海軍将校」 Admirals
・「ハロウィーン・パーティー」 The Halloween Party
・「失われた世界」The Lost World

『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』もそうだったんだけど、どうもマイケル・シェイボンは口に合わないなぁ。
パーツはそれぞれ引っかかるものがあるんだけど、全体的にはイマイチ趣味じゃないんだよなぁ。ちゃんと読み込めてない可能性大だけど。


前半は独立した短篇、後半の「小さなナイフ」から「失われた世界」までは、両親の離婚を描いた連作。
で、言及されていた「人間以上」。題名からわかるとおりSFネタ。

図書館巡りが日課の父子。そろそろ児童書から自分が子供の頃に夢中になったSFにシフトしたいと考えている父。しかし、夫婦は離婚が決定的となっており、離婚とはどういうことなのか、ちゃんと説明しなければならない。帰りの車中、『人間以上』を借りてきた息子が「もしぼくがミュータントだったらさ、パパとママはちゃんとぼくにそう言ってくれる?」と訊いてきた。それに対して父は……

これはいいです。
おそらく、シェイボンの筆致は何気ないやりとりの中に答えが込められているものが多いんだろうけど、SF者としては、これが一番分かり易い。それに加えて、シェイボンのSF愛も感じられる。
確かにこれ読むと上手いよなぁ。他のも同じように味わえたらよかったんだけど……。


というわけで、SF者はこの短篇だけでも必読。
ジャンル愛をモチーフにしたアンソロジー作るなら、「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」、「十三の幻影」と並べて入れる(笑)