20th CENTURY GHOSTS
『ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕 (小学館文庫) [ ジョー・ヒル ]』に全くはまれず、ホラーは口に合わないのかと思ったものの、最後の味見で購入。
収録作品
- 「シェヘラザードのタイプライター」Scheherazade's Typewriter
- 「年問ホラー傑作選」Best New Horror
- 「二十世紀の幽霊」20th Century Ghost
- 「ポップ・アート」Pop Art
- 「蝗の歌をきくがよい」You Will Hear The Locust Sing
- 「アブラハムの息子たち」Abraham's Boys
- 「うちよりここのほうが」Better Than Home
- 「黒電話」The Black Phone
- 「挟殺」In The Rundown
- 「マント」The Cape
- 「末期の吐息」Last Breath
- 「死樹」Dead-Wood
- 「寡婦の朝食」The Widow's Breakfast
- 「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」Bobby Conroy Comes Back from the Dead
- 「おとうさんの仮面」My Father's Mask
- 「自発的入院」Voluntary Committal
- 「救われしもの」The Saved
- 「黒電話[削除部分]」The Black Phone: the missing chapter
おおっ。これはいいですよ。
作品のさらに奧が見たくなると同時に、こちらにもその世界が浸食してくるような感触。
今年読んだ短篇集の中でもかなり粒ぞろいで、ホラー読みだけでなく、異色・奇想短篇好きには是非オススメかと。
個人的お気に入りは、
・「シェヘラザードのタイプライター」
小説を書くのが趣味だった父。
その父が亡くなった後、タイプライターが勝手に打ち始め……
この短篇集自体が、このタイプライターが打ったかのようにも見え、最初に相応しい作品。
題名もいいね。
謝辞内に書かれた作品なので飛ばさないように。
・「年問ホラー傑作選」
ホラーのアンソロジスト。
とある校内誌に載った作品が気に入り、その作者に会おうとするが……
・「ポップ・アート」
少年時代の親友、アートは空気人形として生まれた少年だった。
彼と過ごした日々と別れ……
奇想系、マジックリアリズムとも感触が違いながらも、
けっして普通小説では味わえないこの読後感。
・「アブラハムの息子たち」
厳しい父は、ヴァンパイア・ハンターだった。
息子たちはその技術を学ばされるときが来たが……
本物なのか、狂人なのか判然としないところがいい。
・「挟殺」
失読症で、内にこもりがちの青年。
職場をクビになったその帰り道、よく見かける母子が襲われているのを見かけ……
題名どおり、逃げようもない絶望が素晴らしい。
・「マント」
子供の頃、お気に入りのマントで空に浮かんだ記憶がある男。
仕事も長続きせず、実家に戻ると、そのマントがまだ残っている。
着けてみると……
ヒーローにはならない、何とも皮肉な物語。
・「末期の吐息」
寂れた博物館。
そこには、様々な人間の末期の吐息が収められていた……
・「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」
コメディアンとして成功できなかったボビーは、故郷に戻ってきていた。
『ゾンビ』の撮影で、ゾンビ役として現場にいると、そこにかつての恋人が……
蘇った死者の扮装と現場で、主人公たちの人生の再生が透けて見える、血糊にまみれた爽やかな物語。
・「自発的入院」
精神に何らかの障害がある弟。
彼はものを組み立てる才能があり、地下室にダンボールで巨大な要塞を作り上げていた。
ある日、縁をなかなか絶ちきれない柄の悪い少年がそこに入っていくと……
一番好きなのは、「ポップ・アート」
次点で、「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」「自発的入院」かな。