WATER FOR ELEPHANTS

サーカス象に水を

サーカス象に水を

『サーカス象に水を』サラ・グルーエン〈ランダムハウス講談社
最近、ランダムハウスの単行本よく買ってるなぁ……

大テントの中に鳴り響く、大歓声と拍手。いよいよ目玉の演目、象の曲芸がはじまった。と、異常事態を知らせるマーチが場内に鳴り響く! 逃げ惑う客、脱走する動物たち――そのとき、ぼくは見てしまった。「彼女」があいつを殺すところを……。それから70年。93歳の老人は、移動サーカスで過ごした四ヶ月間を語り始める。芸なしの象、列車から捨てられる団員、命がけで愛した女性、そしてサーカス史上に残る大惨事のさなかに起こった、あの静かな「殺人」のことを。

あらすじはなるべく自分で書くようにしてるんだけど、キャプションがかなり魅力的だったのでそちらを引用。ネタバレしてるけど。
特に激しいアップダウンもなく、比較的物静かな物語。信用できない語り手や大破局への緊張感を想定しながらの不純な(笑)読み方をしていたけど、そう言うこともなく淡々と進む。でも、その筆致が、線路の旅と老人の回想にマッチしていて、クライマックスの殺人へも効果的につながる。大惨事の中で起きているにもかかわらず、本当に全く無音で、だからこそショッキング、かつ、その動作がありありと目に浮かぶ。
ラストの再生も救いがあって、ほっとさせられた。
また、当時のサーカスの状況が細かく描写されている。サーカスが丸ごと列車で積まれてくる様子って言うのが想像できないんだけど、まさに「何かが道をやってくる」わけね。