La Isla de los amores infinitos

ハバナ奇譚

ハバナ奇譚

ハバナ奇譚』ダイナ・チャヴィアノ〈ランダムハウス講談社
「SFとファンタジーのジャンルでは、キューバ国内において史上最多の発行部数を記録する作家」らしいので着手。

祖国キューバを捨ててマイアミで記者をしているセシリアは、あちこちに出没している幽霊屋敷を記事の題材にする。取材の帰りに寄ったバーで、不思議な老女に出会う。彼女が語る、四つルーツの物語。その虜になるセシリア。物語の結末は? そして、幽霊屋敷の正体とは?

ルーツを語る女性と、ルーツを捨ててきた女性の物語。その二人が交錯し、新たなルーツとなっていく……
いまだに、「マジックリアリズムとはなんぞや?」と言う状況なんだけど、この作品の手触りはなかなか不思議。現代世界が舞台ということになんの疑いもないんだけど、幽霊や妖精の存在がくっきりと鮮やか、それでいて自然に溶け込んでいる。登場人物もそれらの存在に否定的ではなく、たとえ自分には見えなくとも、それを受け入れている。そんな空気が心地いい。
老女の語る物語は魅力的で、ちょっと『American Gods』っぽい(読んでないけど)。一方で、幽霊屋敷の存在意義はイマイチ。あってもなくても特に物語は大きく変わらないような。
また、キューバ音楽ネタが多数散りばめられているんだけど、この辺の知識は皆無なのでまるでわからず。