THE ROAD

ザ・ロードコーマック・マッカーシー早川書房

滅亡した世界。大地は灰に覆われ、空はどんよりと曇り、冷たい雨が降り注ぐ。動物も何もいない。本格的な冬が来る前に、南へと向かう父と少年。彼らはひたすら道を進んでいく……

世界が滅んだ理由ははっきりとは語られない(核戦争か?)。暴徒は出てくるものの「ヒャッハーッ!」な展開はなく、危機は食料くらいで派手な出来事は特に何も起きないんだけど、その灰色の世界から目が離せなくなる。
滅びの描写は圧倒的で、個人的にはコーラを飲むシーンが印象的。アメリカなのに、コーラを知らず、そして今後二度とコーラを飲むことがないであろう、というのがまさに世界が滅びたことを表している。
息子を愛する父と、成長していく息子。そんな世界でも、少年が少しずつ自我を形成していくは微笑ましい。どう考えても、希望が残っているようには思えないんだけど、でも彼らの幸せを願ってしまう。
マッカーシーの小説は初めて。映画『ノー・カントリー』はかなり雰囲気をきちんと捕らえているのね。虚無感というか寂寥感というか。『ノー・カントリー』が純粋な悪と出会ってしまう物語なら、『ザ・ロード』はそんな悪意しかなくなってしまった世界の中でも、純粋な善意の物語。神話的で、いろいろな解釈を読み解くことが出来そう。
ビジュアル的には、やはり『子連れ狼』が見えるよね。
[rakuten:book:12113892:title]』の国も読んでみようかしら