PODOLO and Other Stories

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『ポドロ島』L・P・ハートリイ〈河出書房新社 KAWADE MYSTERY〉
怪奇アンソロジーではよく名前を見かける著者の、日本オリジナル短篇集。


 収録作品
・「ポドロ島」Podolo 
 ヴェネチア沖の無人島にピクニックに向かう男女。
 そこに飢えた猫がおり、彼女はかわいそうだから捕まえると言うが……
 あとがきにあるような深読みは出来なかった〜
 個人的には、映画『ハードカバー』のラストに出てくる怪物のイメージ(笑)


・「動く棺桶」The Travelling Grave
 棺桶蒐集をしている男。
 彼は動き回り、人間を捕まえると自動的に墓穴まで掘る棺桶を入手する。
 招いた客相手にそれを使ってみようとするが……
 これは笑える。
 伊藤潤二の『ギョッ』の脚を思い浮かべてしまった(笑)


・「足から先に」Feet Foremost
 幽霊譚のある屋敷。
 そこには、少女の幽霊が現れ、知らずに招き入れてしまうと、
 誰かが必ず死んでしまうと言うが……
 幽霊への対抗手段は割と理屈っぽいんだけど、ラストがなんか唐突な……


・「持ち主の交代」A Change of Ownership
 深夜に自宅に帰ってきた男。
 しかし、中に入れない。
 空いているところはないかと探す間、様々な想像を……
 これは読み解きながら再読したくなる作品。


・「思いつき」The Thought
 毎日のように教会に懺悔しに行く男。
 場所は変えているのだが、ある日向かった教会は……


・「島」The Island
 島の屋敷に住む愛人の元へ来た男。
 しかし、いくら待っても彼女は現れず、更に謎の男が……


・「夜の怪」Night Fears
 ある夜、夜警の前に現れた謎の男。
 その言葉を聞いている内に……


・「毒壜」The Killing Bottle
 蝶の採集が趣味の平凡な男。
 夏休みに、知人から屋敷に招待される。
 知人と妻、そして屋敷の主人でもある兄。
 のんびりと時間が過ぎていくように見えたが……
 読んでいたら眠くなって、ラストの意味が掴めず、何度か読み返す(笑)


・「合図」A Summons
 殺される夢を見たら壁を叩くから来て、と幼い妹に頼まれる。
 壁を叩く音が聞こえるが、面倒だし、甘やかさないようにと無視するが……
 個人的には、これが一番“奇妙な味”な作品だと思う。
 これもいろいろ読み方が出来る作品。


・「W・S」W.S.  
 作家の元に絵はがきが届く。
 最初は無視するものの、やけに自分のことを知っており、
 さらに絵はがきの場所も徐々にこちらに近づいてくる。
 はたして、差出人の正体は?
 途中まではかなり面白かったんだけど、ラストの〆がイマイチ。


・「パンパス草の茂み」The Pampas Clump
 パンパス草の茂みが気に入らないという男。
 その向こう側に何かが潜んでいるような気がするというのだが……


・「愛し合う部屋」Pet Far L’Amore
 蒸し暑いヴェネチア
 当地の名士からパーティに誘われると、そこには無数の蚊帳が吊ってあり、
 様々な部屋の名前が書いてある。
 そのうち、妻と娘ともはぐれてしまい……
 これまた、いろいろと深読み可能。答えはまるで見えてこないんだけど。


昔の作品にしては、古臭さはほとんど感じないんだけど、言い回しや表現が直接的ではなく、微妙で、そっと忍び寄ってくるような筆致で、曖昧が故に、気づかなかったり、オチを考えたりで意外に時間がかかった。読み終わった後にも、反芻したくなる。
個人的お気に入りは、「ポドロ島」「動く棺桶」「毒壜」「合図」あたり。