ANYTHING YOU SAY CAN AND WILL BE USED AGAINST YOU

『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド〈HPB1783〉
短篇集好きなら、と勧められて着手。
女性警官たちを描いたオムニバス。
HPBから異例の早さで文庫落ち

収録作品
·「完全」Absolute
·「味、感触、視覚、音、匂い」Taste, Touch, Sight, Sound, Smell
·「キャサリンへの挽歌」Katherine’s Elegy
·「告白」Lemme Tell You Something
·「場所」Finding a Place
·「制圧」Under Control
·「銃の掃除」Cleaning Your Gun
·「傷痕」Something About a Scar
·「生きている死者」Keeping the Dead Alive
·「わたしがいた場所」Where I Come From

謎解きはなく、それ以前に真相も二の次で、いわゆるミステリ、という感じはあまりないんだけど、短篇としてはひじょうに上手い。
邦題からはちょっと軽妙な印象を受けるものの、その内容は主人公たちの正義と信念、そして人生が描かれていて、読後感は苦い。
MWA賞最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」は、ナイフを胸に刺され、レイプされた女性と、それを自作自演と断定した刑事、そして6年後に再調査の申請を受けたキャシーの物語で、彼女は板挟みになりながらも、自分の正義と信念を通すことを決意する。当然、この後に波乱があるのは予想でき、読者も彼女の決断には悩み続けることになる。
個人的には、キャサリンを主人公にした、「完全」、「味、感触、視覚、音、匂い」、「キャサリンへの挽歌」が好き。
短い中に彼女の全人生が描きつくされ、その満足感と喪失感は素晴らしい。
アタリの1冊でした。