ICE

氷

『氷』アンナ・カヴァン〈バジリコ〉
サンリオ版で持ってるけど、レアSFが新訳で出たことに感謝して着手。

各地で戦争が起こり、同時に猛烈な寒波で世界中が氷に覆われようとしている。そんな中、旧知の少女を追い続ける男。しかし、彼女は小国の独裁者の元にあった……

セカイ系ツンデレ?(笑)


語り手である男とその他支配者、現実と幻覚、距離、それぞれの境目がなくなり、その全てを覆う圧倒的な氷。いつまでも追い続け、そして逃げ続ける姿は悪夢的であり、その切迫感、強迫観念は、陳腐だけど、カヴァン自身のメタファーとして読まずにはいられない。
ただ、ヘロイン=氷、なのかな? 弛緩系だから氷のイメージではないよなぁ。それとも、そこで全てが停止すると言うことで、死そのものということなのか。
登場する男は全員同一人物として読んじゃったんだけど、うがちすぎ? 後半に進むにつれて、文章がどことなく疲弊しているように見え、質量的には薄めなんだけど、こちらもそれに翻弄されて疲れてしまった。


個人的には、ちょっと趣味でない小説だけど、ジャンル者としては一読しておいた方がいいんじゃないでしょうか。