AIR

エア (プラチナ・ファンタジイ)

エア (プラチナ・ファンタジイ)

『エア』ジェフ・ライマン〈早川書房 プラチナ・ファンタジイ〉

中国、チベットカザフスタンに国境を接するカルジスタンのキズルダー村。電話もテレビもいまだほとんどなく、棚田を耕す昔からの生活を続けていた。メイは村の女性のために町でドレスや化粧品を調達してくる“ファッション・エキスパート”だった。ある日、キズルダー村で新ネットワークシステム〈エア〉のテストが行われることになる。1年後に全世界で導入が予定されている〈エア〉は、脳内にシステムを構築し、直接にネットワークにアクセスできるものだった。しかし、テストの最中にパニックを起こしたタンばあさんが事故死してしまう。一緒にいたメイの脳内に、タンばあさんの意識が住み着いてしまうが、同時に、メイは〈エア〉に自由にアクセスできるようになる。彼女は激変する1年後に備え、奔走するのだが……

ネットワーク版『ブラッド・ミュージック』みたいなのかと思いきや、そんな大それた出来事は起こらず、不倫やら、土地をだまし取られるやら、こぢんまりとした事件ばかり。こういうのも嫌いじゃないけどね。
ネットワークで世界中がつながることによって、村のおばちゃん(主人公)の仕事がなりたたなくなることが、世界が激変する縮図になっていると冒頭の数ページで分かるのはなかなかゾクゾクしたものの、物語はとにかく淡々と進む。
ライマンの提唱するマンデーンSFとは離れちゃうけど、ちょっと量子論SFっぽくなる描写や〈エア〉を通して未来も見透かせるようになる展開をもっと読みたかったかなぁ。そもそもネットテレビばかり使って、〈エア〉にアクセスしているイメージがあんまりないんだよね。それとも、テスト運用の時点だと、あれくらいしか使えないのかしら?
個人的にはけっこう面白かったんだけど、乱暴に言って、山奥の村興しだから地味だよなぁ(笑)
あと、最後まで東南アジアが舞台だと思ってた(中央アジアなのね)