限りなき夏

『限りなき夏』クリストファー・プリースト国書刊行会未来の文学
日本オリジナル短編集


 収録作品
・「限りなき夏」An Infinite Summer
 愛する人に求婚した瞬間、未来人によってその存在を凍結させられてしまった男。
 彼は二次大戦中にそれが解けるが、恋人は同じ姿のままの原に立っている……
 既読……なんだけど、全く記憶に残っておらず。
 このラストは、永遠に一緒の時間に収まった、ということでいいのかしら?
 題名は美しいなぁ。


・「青ざめた逍遥」Palely Loitering
 橋を渡ることによって、1日未来や過去に行ける小川のある公園。
 ちょっとしたいたずら心のため、32年後に跳んでしまった少年。
 彼をそこで助けてくれた青年は、ベンチに座る美しい少女に恋しているらしいのだが…… 
 彼女に恋した理由は、何がきっかけ、ということもないタイムパラドックス系?


・「逃走」The Run
 秘書からの緊急事態の知らせを聞いた議員。
 議事堂に向かうが、その途中、無数の少年たちが迫ってくる。
 デビュー作。


・「リアルタイム・ワールド」Real-Time World
 異星の研究をしている観測所。
 ウィンターは研究者たちを観測し、報告する任務を受けていた。
 さらに、そこでは地球からのニュースを遮断することで、人間にどんな影響があるのかという極秘実験も行われていたのだが……
 ラスト近くの『逆転世界』のような感覚の変容がぞっとする。
 果たして、どちらが正しかったのか?


・「赤道の時」The Equatorial Moment
 〈ドリーム・アーキペラゴ〉もの
 それを使えば、時間を大幅に短縮できる渦。
 敵も見方も関係なく、そこには上下に飛行機が無数に連なっていた。
 飛行機が連なってるヴィジュアルはなかなか夢幻的で素晴らしい。


・「火葬」The Cremation
 〈ドリーム・アーキペラゴ〉もの
 叔父の代理で葬式に出た男。 
 式の途中、魅力的な美女に誘われて森の中を進んでいくが……
 既読。これは何度読んでも気色悪い。オススメ(笑)


・「奇跡の石塚」The Miraculous Cairn
 〈ドリーム・アーキペラゴ〉もの
 叔父の遺品を整理するため戻ってきたレンデン。
 彼がずっといた神学校に向かう途中、子供時代の様々な思い出がよみがえる。
 ひじょうにエロチックな物語。
 これは再読すると、また違って読み方ができそうだなぁ。


・「ディスチャージ」The Discharge
 〈ドリーム・アーキペラゴ〉もの
 兵士になる以前のことがまるで記憶にない男。
 わずかに記憶に残っている画家を頼りに、彼は脱走する。
 既読。以前読んだときにはイマイチだったんだけど、
 再読したら、実質的に何もしていない戦争の倦怠感、南国の淫夢の熱、体力を奪われていくような読書感。
 だけど、やっぱりよくわからん。


〈ドリーム・アーキペラゴ〉ものが全て収録されるのかと思ったら、三篇が未収録。
ついでだから読んでみようかな。