BLACK WIDOWERS

アシモフの作品で一番好きなのが『黒後家蜘蛛の会』シリーズ(SF者?)
探偵でも、殺人事件などでもなく、純粋な謎解きとヘンリーが魅力の短篇シリーズ。
文庫未収録分が6話あり、それが揃ったので、やっと読めることに。


「黒後家蜘蛛とバットマン」 Northwestward 〈『バットマンの冒険(2)』所収〉

バットマンのモデルだというウェイン氏。彼はまたバットマングッズのコレクターであり、コンベンションで展示していたのだが、今回は遠いため、執事の2代目ペニワースに行ってもらうことに。その帰り、彼は何者かにつけられているらしいと電話をかけてきた。ペニワースは盗聴されても平気なように、北西へ向かうという。ウェイン氏はそちらにある別荘で待っていたのだが……

バットマンアンソロジーに収められた一編。
オチは英語ネタというか、ダジャレに近いものなので、翻訳で読むとちょっと興ざめ(英語読めないくせに)。


「さはさりながら」Yes, But Why? 〈『ミステリマガジン415号』掲載〉

今回のゲストは、なんとヘンリー。彼が今交際している女性に、不可解な手紙が届いているらしい。それは、彼女の幼い頃や現在の些細な悪さについて書かれており、差出人について全く心当たりがないと言う。ヘンリーは自分では近すぎて気づかないことも、会のメンバーなら、何か気づくかもしれないと頼んできたのだ。はたして、何者が、何の目的で?

未収録分ではもちろん、シリーズ全体でもベストに入る一作。
ヘンリーが赤面するのが見所(笑)


スペースワープ」 Lost in a Space Warp〈『EQ 76号』掲載 〉

几帳面な性格の若いSF作家。出かける前に持っていた折り畳み傘が忽然と消えてしまった。部屋の中を探しても見つからない。恋人は「スペースワープでもしたんじゃない?」などと言うが、もしも、これが彼女の悪戯なら、結婚も考え直さなければならないとまで思い詰めるが……

アシモフの自虐ネタが傑作。


「警官隊がやってきた」 Police at the Door 〈『EQ 80号』掲載 〉

チェロ奏者がゲスト。ある日、突然警官がやってきて、ひどい夫婦喧嘩をしていると通報を受けたという。無論デタラメなのだが、彼は誰がそんなことをしたのか気になってしょうがない。楽しみにしているポーカーのメンバーではないかと考え、まるで楽しめない。はたして?

これはイマイチかなぁ。


「幽霊屋敷」 The Haunted Cabin〈『EQ 83号』掲載 〉

超常現象のトリックを暴くことを生業としている研究家。あるとき、幽霊が出るというコテージを訪れる。案の定、そこには隠しマイクが。町おこしの類なのだ。しかし、ふと気づく。誰にも言ってないはずなのに、どうして自分の名前が呼ばれたのだろうか……



「ゲストのゲスト」 The Guest's Guest〈『EQ 86、120号』掲載 〉

ひどく忘れっぽい印刷屋がゲスト。彼自身も別の食事会ののメンバーなのだが、今度のゲストを別れてしまい、チラシが印刷できない。今度ばかりは、さすがのヘンリーも解けないか?

最後の2編は、答えは読めたんだけど、それでも、軽妙な語り口とあくまでジェントルマンなヘンリーは読んでいて楽しい。
もっと書いて欲しかったな〜