Within the Walls of Tyre

リトペディオン 石の子

リトペディオン 石の子

『リトペディオン』マイクル・ビショップ〈文芸社
全くノーチェックの出版社から、マイクル・ビショップが! しかも単行本なのに安い! と喜び勇んで飛びついたんだけど……

マリリンは55歳のブティック店長。ある日、若い頃戦死した恋人そっくりのセールスマンが現れる。しかも彼は、生まれるはずだった彼女の子供と同じ年齢……。はたして、彼の正体は?

薄っ!
調べたら、1979年の世界幻想文学大賞のShort Fiction受賞作ノミネート作。短篇1本で1冊か……


内容は昔の恋人そっくりの若者に動揺するオールドミス、そして残酷なラスト、となかなかいいんだけど、読んでいて何か違和感がつきまとう。読み終わってからページを見直すと、ああ、段落換えが多くて、一文が短いのか。翻訳ものにつきものの、長い段落と、台詞の後にも文章が続くことがないから、翻訳ものを読んでる気がまるでしない。しかも、訳文もイマイチ、サスペンスが盛り上がっていかないんだよな〜。あと、赤いマニキュアの理由がわからないんですけど……。
英語がダメな人間としては、自費出版系から、こうやって出してくれるのは本当にありがたいし、偉そうなこと言うのもなんだけど、もうちょいジャンル小説らしい訳をお願いしたい。つくづく、プロ翻訳家の技術と言葉に感心してしまいました。
訳者の経歴は、今まで見たことがない(訳者としては)もので、ちょっと笑った。