ユリイカ〈2008年3月号〉

ユリイカ2008年3月号 特集=新しい世界文学

ユリイカ2008年3月号 特集=新しい世界文学

珍しくユリイカを読む。
というか、新刊で買うの初めてかも。
今月の特集は『新しい世界文学』


収録作品は短篇・掌篇11作。


・「墓違い」……ケリー・リンク
 死んだガールフレンドの柩に入れた自作の詩を取り戻そうとする少年。
 墓を掘り返したものの、そこにいたのは見知らぬ少女。
 しかも、彼女は死んでいるのにも飽きたから、自分に詩を書いてくれと言ってきた。
 所詮、男の子は女の子のことなんてちゃんと見てない、てこと? リンクの作品としては、個人的にはそんなに好みでない。
 ただ、語り手の存在がなんか気持ち悪いんだよなぁ。


・「共同パティオ」……ミランダ・ジュライ
 アパートに暮らす小柄な女性。
 隣人夫婦の夫に片想いしている。
 ある日、共同パティオで二人きりになり……
 〈新男子〉っていうのがなんだかわかんないけど、
 ガーリッシュの嫌な部分を見ているようで、けっこうむかついた(笑)


・「ベルリンのロシア人」……ヴラディーミル・カミーナー 
 東ドイツユダヤ人を受け入れると聞いて、ロシアから渡った青年たち。


・「愛の園を抜け出して」……ヴラディーミル・カミーナー
 80年代の終わり、名画座のロビーでたむろっている若者たち。
 いつかモスクワから出て行きたいと話していたが……


・「わたしの小さなお友達」……ヴラディーミル・カミーナー
 ロシア語を学びたいドイツ人。
 ルームシェアしたロシア人の妻を頼ってモスクワに行くが……
 作者のカミーナーはドイツ在住のロシア人。
 三篇とも、国の外に出たいという思いが非常に強く感じられる。


・「ジム」……ロベルト・ボラーニョ
 久々に見かけた友人。
 彼は火吹き男の芸を見つめていたが……
 なぜだかわからないけど、ぞっとした作品。


・「動物小寓話」……イグナシオ・パディージャ
 カラハリ砂漠の洞窟にいる未知の生物。
 見るには厳しい審査と金が必要。
 それでも見られるとは限らず、見た者も……
 これは恐怖を感じたなぁ。


・「夕暮れの儀式」……エドムンド・パス=ソルダン
 娘が恋人を連れ込んでベッドにいるところを覗くのが趣味の父親。
 ラスト、父親の独りよがりなのか、真実なのか、かなり気持ち悪い。


・「悪魔の日記」……セサル・アイラ
 今日から悪人になると決意した男の独白。


・「ベトナム。木曜日。」……ヨハン・ハルスター
 幼い頃、ベトナムの戦火を生き延びた女性を診る精神科医
 彼女は心を開こうとしない。
 しかし、ある日、家に招かれ……


・「七年」……アニー・ベイビー
 エキセントリックで、自己破滅型の彼女との7年の物語。
 これは読み終わるまで、中国作品だとはわからなかった。
 読んでもいないのに、すごい偏見で申し訳ないんだけど、中国の小説はもっとお堅いイメージでした。
 これは本当に英語圏とかの作品かと思った。
 ある意味、一番ショックを受けた短篇かも。


普段読まないような作品ばかりで、いい読書体験だった。
特にお気に入りは、「共同パティオ」、「わたしの小さなお友達」、「動物小寓話」、「夕暮れの儀式」、「七年」あたり。


他の記事や対談は流し読み。
岸本佐知子のインタビューに出てくる本は面白そうなのばっかだなぁ。
"Half Life"は出してくれないかなぁ。
あと、マジックリアリズムの定義が出ていて、やはりそういう認識でいいのね。