The Steam-Drive Boy and other stories

蒸気駆動の少年 [奇想コレクション]

蒸気駆動の少年 [奇想コレクション]

奇想コレクションも14冊目。

収録作品
・「古くなったカスタードの秘密」 The Secret of the Old Custard
・「超越のサンドイッチ」The Transcendental Sandwich
・「ベストセラー」The Best-Seller
・「アイオワ州ミルグローヴの詩人たち」 The Poets of Millgrove, Iowa
・「最後のクジラバーガー」The Last of the Whaleburgers
・「ピストン式」Machine Screw
・「高速道路」The Interstate
・「悪への鉄槌、またはパスカルビジネススクール求職情報」The Hammer of Evil
・「月の消失に関する説明」An Explanation for the Disappearance of the Moon
・「神々の宇宙靴 −考古学はくつがえされた−」 Space Shoes of the Gods: An Archaeological Revolution
・「見えざる手によって」By an Unknown Hand
・「密室」 The Locked Room
・「息を切らして」It Takes Your Breath Away
・「ゾイドたちの愛」Love Among the Xoids
・「おつぎのこびと」The Next Dwarf
・「血とショウガパン」Blood and Gingerbread
・「不在の友に」Absent Friend
・「小熊座」Ursa Minor
・「ホワイトハット」White Hat
・「蒸気駆動の少年」The Steam-Driven Boy
・「教育用書籍の渡りに関する報告書」A Report on the Migrations of Educational Materials
・「おとんまたち全員集合!」Calling All Gumdrops!
・「不安検出書(B式)」ANXIETAL REGISTER(B)

スラデックは苦手だと思ってたんだけど、この短篇集はなかなか楽しめた。


個人的お気に入りは、


・「古くなったカスタードの秘密」
 ガソリン戦争が起こりそうな、きな臭い雰囲気のアメリカ。
 ある日、アグネスはオーブンの中に赤ちゃんを見つける。
 パラノイアまみれでありつつ、007風なスパイもので、スラップステイック。


・「超越のサンドイッチ」
 地球人の知性を上げるためにやってきたガズ。
 特別なことはせず、ただ彼らの配るサンドイッチを食べるだけで超天才になるのだが……
 わかりやすい、普通のSF。
 ただネタが好きな題材なのでお気に入り。


・「ベストセラー」
 島にやってきた8人。
 それぞれが違う視点で語ることによって、真の状況があらわになっていく。
 ラストはやはり没バージョンでしょう(笑)


・「アイオワ州ミルグローヴの詩人たち」
 生まれ故郷でスピーチするために帰ってきた宇宙飛行士。
 しかし、そこにはまるで愛着もなく、ただ退屈なだけ。
 何するわけでもないんだけど、田舎の退屈な雰囲気に押しつぶされそうで嫌。


・「最後のクジラバーガー」
 体をどんどん人工物へと交換していく未来。
 食事する姿をショーとしている男とその妻の間に危機が。
 これはひじょうに夫婦の愛を感じたんだけど、
 スラデックの離婚直後の作品ということは、読み方が間違ってる?


・「ピストン式」
 交通渋滞を解消させるために、マッドサイエンティストが生み出したアルフとは?
 くだらなくていいなぁ。ノリはまったく50〜60年代の怪獣映画。
 まさにオカマ掘るわけね。
 で、なんでこれが交通渋滞解消になるの?


・「高速道路」
 バカンスでバスに乗り込んだ会社員。
 しかし、延々とどこまでもバスに乗り続け……
 出てくる食べ物がかなり美味しそうなんだけど、それが延々と繰り返され、圧迫感と目眩がしてくる。


・「月の消失に関する説明」
 月の存在を否定する男の論証。


・「神々の宇宙靴 −考古学はくつがえされた−」
 デニケンの宇宙考古学ネタ。
 こじつけがたまらない。


・「密室」
 推理小説を読む名探偵。
 それを読みながら、今までに解いてきた密室事件を回想する。


・「ゾイドたちの愛」
 本物人間の目から避けて生きているものたち。
 シドはいつか本物人間になりたいと願っていたが……


・「血とショウガパン」

 横暴な木こりの父と、存在感の薄い母に育てられたヘンゼルとグレーテル
 二人はいつも残酷な遊びをしている。
 ある日、グレーテルが幻視したものは……
 この残酷さはいいなぁ。


・「ホワイトハット」
 虫のような異星人に侵略された地球。
 彼らは西部劇の真似をし、人間の頭に乗っかり、馬として扱っていた。


・「蒸気駆動の少年」
 暴君のような大統領を消す計画を立てたタイムパトロール
 彼らは、子供時代の大統領とロボットの少年をすり替える計画を立てるが……
 「輪廻の蛇」とか「マイナス・ゼロ」を思い出すべきなんだろうけど、
 唐沢なをき浦川よしやすのシリーズが頭に浮かんでしまった。


特に、「超越のサンドイッチ」「ピストン式」「高速道路」「神々の宇宙靴 −考古学はくつがえされた−」「血とショウガパン」「蒸気駆動の少年」あたりがよかったかな。
これだけ気に入ったのがあったんだから、十分元は取れだけど、でも、スラデックはなんか好きとは言えないんだよなぁ。

次の奇想コレクションはマーゴ・フラナガン
また、『たんぽぽ娘』の前に新顔が現れた(笑)