POOR THINGS

哀れなるものたち (ハヤカワepiブック・プラネット)

哀れなるものたち (ハヤカワepiブック・プラネット)

郷土史家がゴミ捨て場から見つけた、19世紀後半の医師による自伝。小説家アラスター・グレイは、註釈をつけ、それを編集することに。その内容は、著者の親友の醜い天才外科医が、身投げした美女を、驚くべき神業で蘇生させたというのだ。生き返った彼女は、性の遍歴で世界を巡り、後に著者の妻になったらしい。グレイはこの物語がフィクションではなく、事実だと直感するが……

メタとか、技法とかは置いといて、普通に面白い。
とは言え、やはり仕掛けは込められていて、物語自体はフランケンシュタインのパロディ的なんだけど、エピローグに当てれた、蘇生したと書かれている女性の手紙と、巻末の註釈がなんとも虚実を悩ます。
小説自体は註釈で完結していて、これが人を食っている。それは客観的な真実なのか、単なる騙りなのか。
イギリス文学・風俗史に通じていれば、もっと註釈で楽しめそうなんだけど、残念ながら両方とも弱い……
アラスター・グレイを読んでみたいのなら、『ラナ-ク 四巻からなる伝記 [ アラスタ-・グレイ ]』よりこちらを先にした方が入りやすいかも。