Poincare's Prize: The Hundred-Year Quest to Solve One of Math's Greatest Puzzles

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ポアンカレ予想−世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者−』ジョージ・G・スピーロ(早川書房

「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」

ええ、さっぱりわかりませんとも!


去年のNHKスペシャルで見た人も多いかもしれませんが、19〜20世紀初頭の天才数学者ポアンカレによって唱えられた予想。要するに、我々の住んでいる世界はボールなのか、ベーグルなのかを、4次元に出て行かずにわかることは出来ないだろうか? という話(要してない?)
以来100年間解かれることはなく、21世紀に入って、謎のロシア人数学者ペレルマンがついに証明する。
証明までの間に、無数の数学者たちが挑戦して、失敗し、新たなテクニックを見つけていくんだけど、もう何が何やら。高次元多様体を手術して、くっつけて、縮めて……とか、『ディアスポラ (ハヤカワ文庫) [ グレッグ・イーガン ]』の後半を読んでいる気分。
二次元で表現できないのはわかるけど、それでも幾何学の話なんだから、図がもっと欲しかったなぁ。


数学読み物は、だいたい証明がゴールなんだけど、ポアンカレ予想に関しては証明の後がドラマチック。ちなみに賞金がどうなるかはまだ不明。
中国の悪者っぷりに、先の偽ディズニーランド報道が頭をよぎる。公正な目で見て、彼らの発表はどうなの? これを読んだ限りだと、ずるく見えるんだけど。
また、インターネットが舞台になっているのが、他の難問物語と違うのが印象的。


数学は全くわからないんだけど、数学者のエピソードは好きなんでちょろちょろ読んでる。この手の本に出てくるのは超天才か超々天才か、悪くても天才しか出てこない。そんな彼らでも、さらさらと紙に書き付けて解けるわけではないし、長年苦しんだ上にミスが見つかるのもよくあること。彼らはけっして神様ではなく、そこに人間臭さと魅力を感じる。それ以上に、奇行が本当に面白いんだけど(笑)
これまで何冊か読んできてわかったことは、数学クロニクルの登場人物は基本的に同じなんだよね。ある時は脇役、ある時は主役の一人、とスポットライトの位置が変わる感じ。フェルマー最終定理を解いたワイルズ四色問題のアッペルは今回はチョイ役。みんなのアイドル、エルデシュはやはり預言者のように登場(笑)


いつもながら数学的記述は流し読みなんでわからないですが、文章的にはサイモン・シンの方が面白く読めた気がするなぁ。