PREDATOR'S GOLD

『掠奪都市の黄金』フィリップ・リーヴ〈創元SF文庫リ-1-2〉
本年度星雲賞受賞作『移動都市 (創元SF文庫) [ フィリップ・リ-ヴ ]』の待望の続編!

"60分戦争"で文明が荒廃し、都市ダーウィニズムに則り、都市は移動しながら食ったり食われたりの世界。ロンドン崩壊から2年。トムとヘスターは飛行船〈ジェニー・ハニヴァー〉号で交易をして、自由に暮らしていた。そんなある日、作家で冒険家のペニーロイヤルを乗せるが、なぜか戦闘飛行船に攻撃を受け、北の氷原に不時着。そこで死の大陸アメリカに向けて移動を続けるアンカレジに拾われる。歴史に造詣が深いアンカレジの領主フレイアと仲がよくなったトムを見て、嫉妬したフレイアは一人で飛び立ってしまう。しかし、そこには反移動都市同盟の罠が。一方、アンカレジに潜む謎の少年がトムを監視していた……。二人は再会できるのか? アメリカへはたどり着くのか?

アメリカへ向かうアンカレジを縦軸に、巨大な掠奪都市アルハンゲリスク、〈ジェニー・ハニヴァー〉を狙う反移動都市同盟、謎の盗賊集団〈ロストボーイ〉と様々な横軸が物語を織りなしていく。
正直、深みは今ひとつで、意外な人間関係は別に驚きはないし、けっこうダメ男なトムや、様々に悩むヘスター、その他のキャラの心理描写をもっと掘り下げて欲しいけど、それを置いていって気にならないほど魅力的なのが、都市が都市を食べるという強烈なヴィジュアル、惜しげもなく出されるSFガジェットの数々。その世界に浸って、彼らを追うことで十分に満足。また、珍妙な解釈がされている遠未来の考古学も楽しい。
今回もアイテムは色々出てくるけど、個人的には、ちょっとだけ描かれるトナカイに引かせた移動村がツボ。
ちなみに、表紙はイメージ違うんだよなぁ。もっと薄汚いイメージ。
色々考えず、移動する都市の振動と臭いを感じたい方には是非オススメ。