悪魔の涎・追い求める男

『悪魔の涎・追い求める男』フリオ・コルタサル岩波文庫 赤790-1〉


 収録作品
・「続いている公園」 Concinuidad De Los Parques
 以前途中でやめた本を再び読み始めた男。
 その内容は……
 2ページのショートショートで、あらすじも書けないけど、なかなかショッキング。
 途中でやめた理由とか、考えてしまう。


・「パリにいる若い女性に宛てた手紙」
 女友達がパリに行っている間にその部屋を借りることになった男。
 彼は、口からウサギが出てくる体質で、すでに10羽も部屋にいた。
 ウサギたちは本などを囓って……
 ウサギのことは置いといて、語り手がかなりイライラさせられる。
 そして、ブラックなラスト。


・「占拠された屋敷」 Casa Tomada
 大きな屋敷に二人で暮らす兄妹。
 部屋から何者かの声が聞こえてきて……
 何もかもがわからず、悪夢を文字に置き換えたかのような作品。


・「夜、あおむけにされて」
 バイクの事故で入院した男。
 眠ると、ジャングルで男たちに追われる夢を見る……
 藤崎竜の短篇を思い出した。


・「悪魔の涎」
 写真が趣味の翻訳家。
 ある日、公園で、少年と女性が一緒にいるのを見かけ、その写真を撮る。
 何か訳ありの様子だったが、彼はそのまま帰ってきて、写真を引き伸ばして壁に貼る。
 すると……
 写真に現実が飲み込まれていく様が、何とも不気味。


・「追い求める男」 El perseguidor 
 天才的なジャズマンと彼の伝記を書いた批評家。
 はたして、彼が追い求めていたものとは?
 読者も作者も、伝記を書かれる側の真の姿は何もわかっていない。
 第三者的にはいらっとさせられるけど、自分もその読者の側だしなぁ……


・「南部高速道路」
 渋滞が全く動かない高速道路。
 人々は周囲の車とコミュニティを作り、食料などを共有しはじめる。
 そうしているうちに季節は変わり……
 これが読みたくて購入。
 期待通りの変な話。『ハイ−ライズ』を横にしたような感じかな。
 狂った異常事態、しかし、そこにある種の平穏が生まれ、日常に戻ることへの寂しさ。


・「正午の島」
 小さな島に魅入られたスチュワード。
 条件のいい転勤も断り、彼はそこへ向かう。


・「ジョン・ハウエルへの指示」
 演劇を見ていた男。
 突然呼ばれ、なぜか第二幕から舞台に出ることに。
 何をやってもいいと言われるのだが……
 メビウスの輪のような、鏡合わせのような、不条理世界。


・「すべての火は火」
 男女関係のもつれ、古代ローマ時代の剣闘士、二つの物語が一緒に語られていく……

 
お気に入りは、「続いている公園」、「パリにいる若い女性に宛てた手紙」、「占拠された屋敷」、「南部高速道路」あたり。
けっこう気に入ったので、他の短篇も読んでみようかな。