DEN VIDUNDERLIGA KARLEKENS HISTORIA

怪人エルキュールの数奇な愛の物語

怪人エルキュールの数奇な愛の物語

『怪人エルキュールの数奇な愛の物語』カール=ヨハン・ヴァルグレン〈ランダムハウス講談社
フリークスものとして着手。

19世紀初頭のドイツ。同じ晩に娼館で二人の子供が生まれた。一人は美しいヘンリエッテ。もう一人は、縦に裂けた顔、しなびた腕、鱗や腫瘍に覆われた体を持ち、耳も口もきけない、醜いエルキュール。しかし、彼には人の心を読む能力があった。魂の双子として、お互いを愛しながら育つ二人。しかし、とある出来事から娼館が閉鎖され、離ればなれに。エルキュールは、施療院での虐待、異端審問、見せ物一座の旅、インチキポーカーの片棒……様々な経験と苦難の中、彼が求めるのはただ一つ、もう一度、最愛のヘンリエッテに逢いたいという希望だけ。はたして、エルキュールとヘンリエッテは再会できるのであろうか?

う〜ん。期待していたのと何か違う……
異形の愛』よりは『エレファントマン』に近い(わかりにくい例え?)。主人公もメリックがモデルっぽいし。
フリークスものならではの、重みや閉塞感があまりなく、かなりライトな印象を受けた。その分、リーダビリティはいい。別に重々しくしろとは言わないものの、フリークスを主人公に据えるには、あと一味、必然性が足りない気がする(ティム・バートンは重くはないけど、その辺が上手いよね)。
この手の小説では、肉体とは別に、「精神や魂は自由」というテーマになることが多いけど、エルキュールは、物理的にも自由を得るほどの強いテレパスで、ハンディキャップに意味がなくなってるのも大きい。後半のエスパー復讐劇(笑)になる展開も予想外。
あと、所々、視点を現代に置いているような表現も、ちょっと興ざめしたかな。
全体的に決して悪くないんだけど……やっぱ『異形の愛』を期待しちゃったのかな〜。まぁ、あれは超えられないだろうけどね。