MISFORTUNE

ミスフォーチュン

ミスフォーチュン

あらすじはそそられたものの、気鋭のミュージシャンが描く! ていうのが、どうにも引っかかっていたんだけど……

1820年、ロンドンの町はずれに捨てられていた赤子を、イギリスで最も富裕なラヴオール家当主が連れ帰った。彼は、その男の子を幼い頃になくなった最愛の妹の生まれ変わりと考え、ローズと名付け、館の司書との間に生まれた娘として育てることにする。両親の愛情、親友のハミルトン姉弟に囲まれて、幸せに暮らすローズ。しかし、思春期を迎え、自分が男だと知り、さらに父の死、館を乗っ取ろうとする親戚によって嫡子ではないと非難され、母と共に追放されてしまう。ローズは一人放浪の旅に出る中、ハミルトン親子は暗号で記されたラヴオール家の年代記の解読、母は謎の詩人メアリー・デイの作品を読み解いていく。やがて、全てが解明されたとき……

色眼鏡の先入観はよくありませんな。
秘密の出自、非道な親戚、数奇な運命、大団円、とこの手の物語のパターンに即していて、ラストの予想つくものの、厚いながらも途中で飽きることもなかった。
ただ、展開的には普通だからこそ、主人公の“おとこおんな”状態をもっと前面に押し出して欲しかった。19世紀のカントリーハウスを舞台にした典型的な物語の上に、ドラァグクィーン的(そこまで行かなくても)な口髭とドレス姿の倒錯的な主人公を期待していたんだけど、ローズ自体は普通にいい子なんだよなぁ。放浪の旅の間のことは敢えて書いてないし(そこが読みたいのに!)。
と言いつつ、基本的にハッピーエンドが好きなんで、数奇な運命が収束していく謎解きは楽しめた。本そのものへの愛着も描かれているし。
また、物語に挿入されている歌詞とか詩はいつも読み飛ばしているんだけど、著者がミュージシャンと言うこともあるのか、バラッド自体が物語の重要な要素になっている。
個人的には、面白かったけど、もうちょいジャンクな下味が付いていたらなぁ、という感想。