THE MEMORY OF RUNNING

奇跡の自転車

奇跡の自転車

スミシー・アイド、43歳、体重126キロ。フィギュアの製品管理の仕事をし、友達も恋人もなく、夜は酒とジャンクフードの日々。そんなある日、両親が自動車事故で死亡。遺品を整理していると、父宛の一通の手紙を見つける。それは、20年以上前に行方不明になった姉ベサニーの死亡通知だった。彼女は精神を病み、奇行を続けていたのだが、家族は皆彼女を愛していた。ひとりぼっちになってしまったスミシーは、茫然自失のまま、昔乗っていた自転車を走らせる。気づくと、子供の頃によく来ていた釣り場にいた。彼は、そのまま大陸を横断し、姉の遺骸を引き取るため、ペダルを踏み始める……

ハンカチを用意していたものの、期待していたようなイタい話ではなく、いい話だったので泣けませんでしたが(笑)、それでも、かなりのアタリ。
自転車での旅で出会う様々なエピソードと、姉ベサニーの思い出が並行して語られていく。道中出会う人々はいい人ばかりで、特に、ずっとスミシーのことが好きだったノーマがいいんだよなぁ。一方で、医者と警察官には出てくるたびに嫌な思いをさせられるんだけど、なんか作者にトラウマがあるのか?
残念なのが、自転車そのものの素晴らしさはそれほど描かれていないこと。これがあれば完璧だったのに。このへんは『自転車少年記*1で補充しましょう。


子供時代の自転車を走らせることが、人生の再発見・再認識の象徴になっているのは、容易にわかるんだけど、やはり、アメリカにとって、自転車は子供の乗り物なのね。ヨーロッパは三大レースを開催してるし、自転車旅行の情景もたびたび見るけど、アメリカは自動車・バイクなんだよね。少年時代ものは必ず自転車だし、映画でも大人が乗らないアイテムとして描かれている。というか、大人が乗ってると小馬鹿にされるんだよね。『グーニーズ』とか『40歳の童貞男』とか。一番印象的なのは、『E.T.』でしょう。少年時代=魔法=自転車と直結してる。QUEENの「Bicycle Race」とかモンティの「Bicycle Repair Man」はそんなアメリカを鼻で笑っている作品だと思うんだけど、考えすぎ?


それはさておき、期待していた虐げられしものではなく、人生は悪い人・ことばかりじゃないという方に重きが置かれていたけど、なかなかオススメ。元々がオーディオ・ブックだからなのか、非常にリーダビリティもいいしね。