GOULD'S BOOK OF FISH

グールド魚類画帖

グールド魚類画帖

『グールド魚類画帖 十二の魚をめぐる小説』リチャード・フラナガン白水社〉読了
このての生物画は好きだし、表紙のタツノオトシゴに惹かれて着手。
グールドって鳥類図鑑のグールドかと思ったら、別人でした。
こちらのグールドも実在の人物。
ちなみにこちらで見ることができます。

タスマニアに流刑になった画家グールドの手記を見つけた男。
専門家に見せても、それは贋作かでたらめだと言われる。
しかし、ある日、読み終えた途端にそれは消えてしまう。
男は、自分の記憶を頼りに、手記を複製しようと考える。
そこに描かれる、グールドの物語とは……

かなり疲れる本で、毎日ちょっとずつ進めて、やっと読了。
表紙や途中に挿入される、どこかユーモラスな魚の絵は、実際にグールドの手によるもの。
魚を追い、どうやって描くかという話、かと思ったら大間違い。
出来事の前後を行ったり来たり、グロテスクで残酷な描写の数々、
なんというか、ぐるぐるぐるぐる酔いそうな読書感。
疲れる上に、エキサイティングな展開があるわけでもないのに、なぜか、途中で逃げることができない。
嘘の書類から現実を凌駕し、さら虚構が浸食していき、溶けていく瞬間がかなりゾクッとした。
万人向けではないけど、変な小説好きにはオススメ。


原著は、グールドが染料を使い分けるのに合わせて、6色のインクで刷られていたそうだけど、翻訳版は2色。これは再現して欲しかった。残念。