THE BALLAD OF BETA-2

ベータ2のバラッド (未来の文学)

ベータ2のバラッド (未来の文学)

『ベータ2のバラッド』若島正編〈国書刊行会 未来の文学〉読了
イギリス〈ニュー・ウェーヴ〉を中心としたアンソロジー
収録作品
・「ベータ2のバラッド」……サミュエル・R・ディレイニー
 遥か昔、新天地を求めた星間船団。
 到着したものの、その内の2隻には誰も乗っていなかった。
 教授に命じられて調査に向かう。
 今さら新発見もありそうにない、つまらない調査だと思ったが……
 あらすじだけだと、普通のSFだなぁ。
 『バベル-17』がはまれなかったんで、ディレイニーは敬遠気味だったんだけど、
 これだけのために買う価値があったと思うほど、大変気に入りました。
 神話・伝承が出来上がっていく様を追体験できるのは鳥肌もの。
 途中に題名にもなっているバラッドが出て来るんだけど、
 これがラストではちゃんと意味が通って読めるようになるのが素晴らしい。
 『ダールグレン』が出る前に、
『エンパイア・スター』と『時は準宝石の螺旋のように』は読んでおこうかなぁ。
・「四色問題」……バリントン・J・ベイリー
 これは、個人的に全くダメ。理解できませんでした。
 面白いのか、つまらないのかもわからん。
 読んでいるのが苦痛。
・「降誕祭前夜」……キース・ロバーツ
 二次大戦により、ドイツ帝国に吸収されたイギリス。
 そこでは、クリスマスはアーリア人のイニシエーションのような
 グロテスクな儀式に変化させられていた……
 『パヴァーヌ』系の改変歴史もの。
 けっこう嫌な気分になる。
・「プリティ・マギー・マネーアイズ」……ハーラン・エリスン
 ラスベガスでついていない男。
 最後のコインをスロットマシンに入れると、なんと大当たり。
 さらに次も!
 そのマシンには、以前、ある事件があった……
 〈ニュー・ウェーヴ〉に反応したエリスンの作品。
 目の前でフラッシュをたかれているような、騒々しく激しい作品。
・「ハートフォード手稿」……リチャード・カウパー
 親しかった大叔母の遺品に、17世紀の本を受け取る。
 そこには、19世紀以降のものとしか思えないページが綴じ込まれていた。
 それは、ウェルズの作品のモデルになった男の手記だというのだが……
 手堅く面白かったし、こういうの好きだけど、
これまでのラインナップだとおとなしめかな。
・「時の探検家たち」……H・G・ウェルズ
 「ハートフォード手稿」が『タイム・マシン』へのオマージュなので、
 その原型短篇がボーナストラックとして収録。
 大昔の作品ですが、けっこう楽しめました。


とにかく、個人的には「ベータ2のバラッド」がお気に入り。
その他の作品も、バラエティに富んでて面白い。
かなりいいアンソロジーだと思います。4本が初訳だし。
ちょっと高いけどね。