DIASPORA

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラグレッグ・イーガン〈ハヤカワSF〉読了
現代SF作家最高の一人、イーガンの新刊!


宇宙消失 (創元SF文庫)』どうも好きになれなくて、イーガンはちょっと敬遠気味だったんだけど、
万物理論 (創元SF文庫)』があまりにも凄くて、もう一度試してみるために読む。

30世紀、ほとんどの人類はソフトウェア化され、コンピュータ内の「ポリス」と呼ばれる仮想都市に暮らしていた。
ある日、トカゲ座の中性子星が崩壊し、ガンマ線が降り注ぎ、僅かに残った地上人は全滅。
計算上は、崩壊は700万年後だったはず。
人類は、その謎を知っている超越種族を捜すため、
また、それがいないのならば、その他の異星文明に警告するため、
自分たちのコピーを1000体作り、宇宙に進出していく!

基本的に、本を途中で読むのを止めるのは嫌いなんだけど、数ページで早くもそのポリシーが揺らぐ。
ポリスでの子供の産まれ方が全く見えず、やめようかと思うものの、
自我に目覚めるシーンがけっこう感動的で、なんとか乗り切る。
それ以降も、さっぱりわからない理論が何度も出てくるけど、読み飛ばすことを学ぶ(笑)
それを抜かすと、かなりオーソドックスなSF。
あとがきにもあるように『宇宙船ビーグル号』みたい。
長篇と言うより、連作なんで、そういう意味では読みやすいかな。
ただ、そのディティールがすこぶるハード。


一瞬も永遠も、極大も極小も、まるで関係なく、また、いくらでも自分をコピー、
さらにそれらが経験したことを統合できる主人公たち。
彼らにとっては、数式やデータが実体を持っている。
真理鉱山の描写はかなりツボ。
万物理論』のときも思ったんだけど、イーガンは、一般の認識が理解を拒絶するような世界を、
力業で、それなのに無理矢理に見せずに描くのが天才的。
ちょっとまたぐように隣の宇宙や次元に行ってしまう様は、かなりクラクラする。
単に異次元と一言で片づけるんじゃなくて、ちゃんと説明されてて、
特に5次元世界は凄い。これまた全く何が見えているのかわからないんだけど、5次元ヴィジョンに酔う。
っつうか、5次元って何? 読んでもどういう方角なのかさっぱり。
誰か2次元で図解して!


以前、短篇で発表された『ワンの絨毯』も組み込まれている。
違う星なんだから、地球と全く違う生命体がいるんだけど、
『ワンの絨毯』の異星生物の異質さは『ソラリス』並。


SFにどっぷり浸かれる傑作。
……なんだけど、個人的には『万物理論』の方が好み。


ところで、ヤチマってずっと少女のイメージで読んでたんだけど、男の姿?