OMBRIA IN SHADOW

影のオンブリア (ハヤカワFT)

影のオンブリア (ハヤカワFT)

『影のオンブリア』パトリシア・A・マキリップ〈ハヤカワFT〉読了


世界最古の都オンブリア。
その宮殿には、忘れ去られた秘密の通路や部屋が無数にあり、
そして、都の地下には、沈んでいった過去の都と時間が地層のようになった影が存在していた。
大公ロイス・クリーヴが死んだとき、
大伯母ドミナ・パールがオンブリアを我がものにしようと動き始めた。
ロイスの愛妾リディアは宮殿から追いやられ、
大公を継いだ幼いカイエルはドミナの前で何もできない。
庶子だが、大公にかわいがられていたデュコンは、絵ばかり描いていて何を考えているのかわからない。
一方、影の都にいる魔法使いフェイの助手マグは、
陰謀渦巻く宮殿の同行を見極めようと、主人に内緒で探るが……


プラチナファンタジィの新刊にして、
20年近くぶりに出たマキリップの翻訳。


正直言って、プラチナファンタジィじゃなかったら新刊で買わなかったんだけど、
これがかなりの当たり。
主人公が複数いる形になっていて、キャラクターがそれぞれ立っている。
耐えるカイエル、彼を守ろうと頑張るリディア、様々な陰謀に狙われるデュコン、
醜悪なドミナ、謎めいたフェイ、そして狂言回しにして影の主役とも言えるマグ。
ストーリーは、ドミナの陰謀からカイエルとオンブリアの支配を守れるか、と言うのが軸。
そこに、
ドミナの正体とは?
影のオンブリアの真実とは?
デュコンの父親は誰なのか?
と言う謎が横糸。


派手な場面は特にないんだけど、どっしりとしたファンタジー世界に浸れる。
海外の、ヨーロッパ風ファンタジー宮殿に付き物の、
忘れ去られた部屋、地下世界って好きなんだよねぇ。
『グローリアーナ』と被るけど、個人的にはこちらの方が面白かった(と言うか、読みやすかった)


それにしても、海外のファンタジーって、扉を抜けると、そこには秘密の世界、ていうの多いね。
昔話とか考えても、日本はないよなぁ。
ドアと引き戸でそんなに違うものなのかなぁ。
西洋のファンタジーがすぐ横に違う世界があるのに対して、
日本だと、山の向こうで、全く別の世界なんだよね。