LOST IN A GOOD BOOK

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈2〉さらば、大鴉

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈2〉さらば、大鴉

文学刑事サーズデイ・ネクスト2 さらば、大鴉』ジャスパー・フォードソニーマガジンズ〉読了。


1年間待ってました第2巻!
ネタの多さと面白さにメロメロになった前作。
たいてい2巻はパワーダウンするものだけど、それどころか益々悪ふざけ度アップ!


ランデンと結婚して、穏やかな新婚生活……と思ったものの、
ジェイン・エア』事件で一躍時の人となったサーズデイは連日のインタビュー攻め。
さらに、失われたシェークスピアの幻の作品『カーデニオ』は突然見つかるし、
元時間取締官の父から、数日後に地球上の全生命体がピンク色のねばねばになってしまうと告げられるし、
何者かが偶然を操ってサーズデイの命を狙ってくるし、
真の文学取締官として修行が始まるし、
何よりゴライアス社が、過去に戻ってランデンの存在を消してしまったのだ!
元に戻して欲しかったら、サーズデイが『大鴉』の中に閉じこめた社の重役、ジャック=シットを連れ戻せと言う。
果たして、サーズデイはもろもろの問題を解決できるのか!?


話に全く関係のないネタとエピソード満載なのがこのシリーズの魅力。
だけど、前作はアシュロン・ヘイディーズを捕まえ、
ジェイン・エアを救うと太い軸が(いちおう)あったけど、
今回はメインエピソードが幾つもあって、ちょっと散漫な感じ。
また、それぞれの出来事がちゃんと解決しないで、次に続く感じで終わるから欲求不満。
その分、前回よりも、各キャラクターの魅力が書き込まれ、話を引っ張っている。
中でもネクストおばあちゃんとミス・ハヴィシャムの二人のお年寄りが際立って面白い。
いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたらしいネクストおばあちゃんは魅力的。
彼女の若かりし頃の外伝とか出ないかなぁ。
準主役と言ってもいいミス・ハヴィシャムは『大いなる遺産』の登場人物。
サーズデイの師匠にして、ブガッティ好きのスピード狂。
あと、ネクストお母さんの過去も少しだけ明らかに。


今回、明らかにされたのが、本の中にも世界があって、
本の世界の人々は、まるで舞台のように読者の前で演じているのだ。
その世界の中のもめ事を処理する組織があると言うこと。
また、作者の勘違いなどによって書かれたバグを処理するのも彼らの仕事。
正直、現実世界の文学犯罪の方が好み、と思ってたんだけど、
この設定は陳腐になりそうなのに、非常に細かく考えられていて面白い。
個人的には、洗濯機のマニュアルの中で働いている人か好き。
3巻は、ラストから考えても、小説の中の世界がメインになるのかな?
英米古典文学読んどけばよかった……
地上26階地下26階の図書館行きてぇ〜。


好きなキャラと小ネタは無数にあって、
書き出したくなるのは『ワイルド・カード』以来。
レゴ判別システム付掃除機いいなぁ。
吸血鬼・狼人間対策局のスパイクは相変わらずイイ感じ(脳内ボイス:山寺宏一
ジャバウォッキーは釣り好きのいい奴とか。
アンブローズ・ビアスは小説内で行方不明になったとか。
文学内の人物は役柄を掛け持ちしてるとか。
などなど……


この作品、作者はどう意図しているかわからないけど、非常に漫画っぽい。
そう言っても、別にライトノベルのような挿絵があるわけではなく、
表現が漫画っぽいのだ。
漫画だと、駒の外に出たり、頁の向こう側と会話したりはよくあるけど、
それを小説でやられるとめまいがしそう。
気になったのは、サーズデイ自身は、現実の人間なのか、
それとも、自分もまたこの小説内の人物だと知っているのか、それがわからない。
なんか、その辺もネタにしそうだけど。


イギリスと言うことが関係しているのかどうかわからないけど、
J・H・ブレナングレイルクエストシリーズにちょっと雰囲気似てるかも。
ちょっとボケ気味のペリノア王出てくるし。


この濃密な小説空間を是非味わって欲しい。
オススメ。