THE SINGING DIAMOND

歌うダイアモンド (晶文社ミステリ)

歌うダイアモンド (晶文社ミステリ)

『歌うダイアモンド』ヘレン・マクロイ〈晶文社〉読了


ヘレン・マクロイと言えば、異色作家とカテゴライズされることはなく、真っ当にミステリ作家。
でも、この短篇集は半分がSFだというので着手。


収録作品
『東洋趣味(シノワズリ)』
各国大使が集まる、19世紀北京。
ロシア大使は中国書画のコレクターで、ついに幻の王維の絵を手に入れる。
その晩、彼の美しく若い妻が行方不明になってしまう。
『Q通り十番地』
夫が眠ったのを見計らって、怪しげな建物に行く人妻。
合い言葉を言って入ったそこは、
今では禁制品となった本物のパンやバターを食べることができるのだ!
『八月の黄昏に』
超高速で飛ぶ機械を発明した二人。
その試運転で、二人がたどり着いた場所は?
『カーテンの向こう側』
いつも同じ悪夢を見る妻。
彼女は、いつもカーテンをくぐる前に何とか目を覚ましていた。
カーテンをくぐれば、きっと恐ろしいことがあるに違いないのだ。
精神科から帰ってきたその晩も、同じように夢を見て……
『ところかわれば』
異星人の存在が確認された。
なんと、その星の人々とはほとんど姿が変わらない。
そして、ついにその星にロケットで行くことに。
『鏡もて見るごとく』
ある女子校で、一人の教師がなんの落ち度もないのにクビにされた。
しかも、続けて二度も。
彼女には奇妙な噂があり、それは彼女のドッペルケンガーが度々目撃されるのだという……
『歌うダイアモンド』
各地で歌うダイヤモンドのような飛行物体が目撃される。
しかも、それの目撃者が立て続けに死んでいて……
『風のない場所』
あるリゾート地。
その夏、ついに最終戦争が起きる。
『人生はいつも残酷』
ブライは十代の頃、裕福な家族に拾われて、ボート係として働いていた。
しかし、ある日、5000ドルを盗んだと疑われ、さらにその夜、何者かに殺されかけ、
そのまま逃げる。
十数年後、成功した彼は、名前を変え、自分を殺そうとしたのは誰なのか、
その町に滞在する。
そこで自分は、死んだことになっていると知り……


SFは『Q通り十番地』、『八月の黄昏に』、『ところかわれば』、『風のない場所』辺りかな。
正直言って、う〜ん、という感じ。
発表当時はわからないけど、今読むと、使い古された普通のSFなんだよね。
『ところかわれば』は藤子・F・不二雄の短篇で同じネタあったな。
時代は関係ないかな。
こないだ読んだデイヴィッド・イーリイの短篇はかなり昔のものだけど、結構強烈だったからなぁ。
作家のスタンスの違いかな?


そんなわけで、面白かったのは普通にミステリの『東洋趣味(シノワズリ)』
異国情緒たっぷりで、入り組んだ路地のちょっと先も闇に包まれて伺い知れない、
そんな魔窟のような中国の町が見事に書き込まれている。
犯罪自体もコレクター心理、欧米人にとっての異世界のしきたり、に沿っていて満足。


ちなみに表題作の『歌うダイアモンド』 はミステリ。
結構期待してたんだけど、こういうミステリは好きじゃないなぁ。
どうしても、そんなわけないじゃん、という意見が先に出ちゃう。
これがSFなら納得するんだけど(笑)
ミステリ読みにはなれそうもない。
初めてジャンル小説の壁ってのを実感した気分。


『人生はいつも残酷』 は中編で、日本版オリジナルで、原著には入ってないのかな?
確かに薄くなっちゃうけど、これ省いてもうちょい安くしてくれればよかったのに。