BIG FISH


ビッグ・フィッシュ コレクターズ・エディション [DVD]
ビッグ・フィッシュを鑑賞。


猿がいっぱい出てくる映画を撮ったときはどうしようかと思ったが、
その後、恋女房のリサ・マリーと別れて、
暗黒面に陥って(笑)今度こそは、『異形の愛』を撮ってくれるかと思いきや……


楽しいほら話ばかりして、様々な人から好かれる父。
巨人と旅に出たり、プロポーズのために一晩で水仙で庭を埋めたり、
シャム双生児の姉妹と地球を半周したり…… 
しかし、息子はいつしかそんな父を嫌い、疎遠となる。
そんなある日、母から彼の様態が悪化したと連絡が入る。
残された時間も少なく、父の本当の人生を聞こうとするが、
それでも荒唐無稽な話ばかりを始めて……


ついに、バートンが僕らの元に帰ってきてくれました!
以前から、バートンはトッド・ブラウニングフリークス [DVD]』を撮るのが目的なんだろうなぁ、と考えてたんだけど、
おそらくこの作品が、それなんだと思う。 
もうラストは涙。
今年の泣き映画は『王の帰還』と思いきや、一気に首位から転落。
すばらしいラスト。
これを見て、バートンもぬるくなったと見る向きもあるかもしれない。
ここは言い尽くされてるけど、大人になって戻ってきたということでしょう。


原作つきだけど、これはもうバートンのプライベートフィルム、自伝的映画と扱ってもかまわないと思う。
そこかしこに、彼のビジョンがあふれている。
ラストは原作にはなく、バートンの答え、として受け取れるかな。
個人的注目ポイントを(ネタバレありかも?)
・最初に出てくる、大きな魚に変身した泥棒は原作者の名前。
・町を一緒に出て行く5メートルの巨人がまず泣きポイント。
ファンタジーに出てくる巨人ではなく、
足を引きずるように歩き、その手足は末端肥大のよう。流石わかってますな(笑) 
エドワードが迷い込む不思議な町スペクター。
その名のとおり、あの世、と考えることができる。
住人たちは皆裸足で白い服、そこに行くのはいつも危険な目にあってからなのだ。
それとも、危険の末に辿りつく場所、楽園と言うこと?
ダニー・デビート演じるサーカスの団長の服装は「ナイトメア」のメイヤーとよく似ている。
また、彼がたとえで使う「象に踏まれた〜」のくだりはエレファントマンのことだ思われる。
・そこにいる小人のピエロは、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の一輪車のクラウンか?
インタビューの中で、道化師は怖いといっていたから、
『ナイトメア〜』のクラウンは顔が外れて、本作の小人のピエロは半分しか顔を塗っていないのかも。考えすぎ?
・戦時中の危険な作戦中に出会う、シャム双生児の姉妹。
役どころとしてはヒルトン姉妹がモデルみたいだけど、
その体形はトッチ兄弟とよく似ている。
またアジア人というのはチャン&エンかも。このキャラを出しただけですばらしい。泣きポイント。


これだけだと、いつもと変わらない。
けど、今までの作品が、
フリークス=サイドショー=ファンタジーへの愛だったのに対して、
この作品は、それに加えて、観客=現実への愛にもあふれている。 


普通、社交的で人気者、というエドワードはファンタジックではない。
けれど、ギークでフリークなバートンにとってはその存在こそがファンタジー
彼の映画に出てくる、道路を挟んで対照的で清潔な町並み。
その理想のアメリカ的故郷も、彼にとってはファンタジーで、
主人公たちはいつも暗くいびつな家に住んでいる。
しかし、今回象徴的なのは、ジェニファーの暮らす歪んだ家をまっすぐに直す。
これこそが、今までとの大きな変化だと思う。
フリークスも受け入れ、抱合する世界への愛。


だから、もう『異形の愛』は撮れないのかもしれない。
少なくとも今は。
今現在の異形たちの愛が、『ビッグ・フィッシュ』という形になっているんだと思う。
これ書いてて、改めて、バートン好きだぁ、と思った。


最後に俳優についてもちょろっと。
主演はユアン・マクレガー
いや、レーザーソード振り回してるよりよっぽどステキ。
初めていいと思いましたわ(笑)
老いた妻役はジェシカ・ラング
全てを受け止めてくれるその表情がたまらない。
スティーブ・ブシェミはやはりいいなぁ。
出てくるだけで怪しさ満点。
ダニー・デビートはいつもながら気になる。
あの背の高さと体型が。
で、注目はヘレナ・ボトム・カーター。
今のバートンの恋人。わかりやすい。


さらに音楽は我らがダニー・エルフマン


オススメ。


ところで、万能ハンド売れたのか?
俺なら買うけど。