FESSENDEN’S WORLDS and other stories

『フェッセンデンの宇宙』エドモント・ハミルトン〈河出書房新社〉読了


奇想コレクション第四弾!
ハミルトンというと、
どうしても『キャプテン・フューチャー』や『スターウルフ』、『星間パトロール
というスペオペのイメージ。
海外でも、ジャリ向けSFと言う感じで、あまり扱いは高いとは言えないそうだ。


しかし、短篇は様々なジャンルを書いていて、
この短篇集は、それぞれチョイスした作りになっている。
初訳は『風の子供』『凶運の彗星』『太陽の炎』『翼を持つ男』


『フェッセンデンの宇宙』
史上最高の科学者フェッセンデン。
彼は極小の宇宙を作りだしたと言う。
それで様々な実験をしているのだが、
そこには無数の知的生命体がいて……
名作と名高い短篇。
これをネタにした鶴田謙二の漫画なかったっけ?


『風の子供』
トルキスタンの奥の秘境に金脈があると聞いた冒険者のブレント。
しかし、そこにはまるで意思を持っているかのような風が立ち塞がる。
危うく命を落としそうになったとき、一人の少女に救われる。
彼女は風と会話できると言うのだが…… 


『向こうはどんなところだい?』
火星探査から帰ってきたフランク。
死んだ仲間の遺族や、故郷の人々に火星での出来事を期待を持ってせがまれるが、
その実情は……
かなり好きな一作。
厳しく、寂しい話。


『帰ってきた男』
ウッドフォードが目を覚ますと、そこは棺の中だった。
極度の強硬病の彼は、死んだと思われて葬られてしまったのだ。
なんとか納骨堂から脱出し、妻を驚かせてやろうと急ぐが……
この話、怖い。
かなり窒息感を感じ、ラストもなんかきついなぁ。


『凶運の彗星』
ある日、太陽系に侵入してきた緑の彗星。
それは地球にはぶつからないはずだったのだが、
なぜか地球は軌道を少しずつ変え、このままだと彗星のガスに巻き込まれてしまう。
そんなことを知らない旅行中のマーリンは、湖を船で渡っている途中、
突然怪光線を受け、水面に投げ出されてしまう!
世界破壊者の異名を持つハミルトンらしい短篇。
てっきり、水星のもたらすパニックものかと思ったら、
おいおい、そうなん!? と突っ込んでしまった(笑)


『追放者』
酒場で会話する4人のSF作家。
一人が、自分の考えた異世界が、現実化してしまった、と話し始める……
ショートショート
『ベムがいっぱい』みたい、と書いたらネタバレかな。


『翼を持つ男』
突然変異で翼を持って生まれた子供。
彼は青年へと成長し、空を自由に飛べるようになる。
ある時、舞い降りた農園で、一人の女性に恋をして……


『太陽の炎』
一級のベテラン宇宙飛行士が突然引退した。
彼は、水星で何か目撃したらしいのだが……


『夢見る者の世界』
冒険する蛮勇の王子カール・カン。
目を覚ますと、アメリカで会社勤めをしているヘンリーだった。
ヘンリーは生まれたときから、眠るとカール・カンとなった夢を見ていた。
しかし、カール・カンも、地球と言う世界のヘンリーとなった夢を見ていると思っているのだ。
はたして、どちらが現実で、夢なのだろうか?


気に入ったのは、
『フェッセンデンの宇宙』、『向こうはどんなところだい?』、『帰ってきた男』、『追放者』
あたりかな。


さすがに古い感じはしちゃうかなぁ。
と思ったら、ハミルトンって、今年生誕百周年だそうだ。


奇想コレクションもこれでおしまい……
と思いきや、秋に
『イヴのいないダム』アルフレッド・ベスター
が出るそうだ。
今後も続けて出して欲しいねぇ。