THE MAGIC SPECTACLES

魔法の眼鏡 (ハヤカワ文庫FT プラチナファンタジイ)

魔法の眼鏡 (ハヤカワ文庫FT プラチナファンタジイ)

『魔法の眼鏡』ジェイムズ・P・ブレイロック〈ハヤカワFT〉読了。
久々のブレイロックの新刊はプラチナファンタジーから。
しかも、ジュヴナイル。


ジョンとダニーの兄弟は、ある日、町に突然現れた骨董品店で、
ビー玉でいっぱいの金魚鉢と、不思議な眼鏡を手に入れる。
家に帰り、その眼鏡で窓を覗くと、そこには見知らぬ光景が。
二人と飼い犬のエイハブがその窓を通り抜けると、周りに森が広がる草原にいた。
空には窓だけが浮いている。
しかし、二人はゴブリンに襲われ、片方のレンズを奪われてしまう。
壊れた眼鏡では窓は見えず、家に帰ることもできない。
そこに、石鹸銃でゴブリンを追い散らしながら現れたのは、
ミスター・ディーナーという太ったおじさん。
彼は発明家で、家に帰してあげるというのだが、
言動は支離滅裂、ドーナツに目がなく、しかも、家の上に寝ている人物は……
はたして、兄弟は元の世界に帰れるのか?


う〜ん。
個人的な感想としては、新刊で買わなくてもよかったかなぁ。
いかにもジュヴナイルって感じが、どうもはまれなかった。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品の方が、まだ自分としては楽しめるかなぁ。


ただ、嫌なことがあると自分の負の感情を切り離していって、  
どんどん人間が崩壊していくミスター・ディーナーの様は痛くてよろしい。
つやぴかのドーナツがかなり美味しそう。
溶けた砂糖をかけたドーナツのこと?


あとがきで言及されていたので、
SFマガジン』1998年11月号掲載の『十三の幻影』もついでに読む。
1997年度世界幻想文学大賞・短篇部門受賞作。


老婦人から譲ってもらった古い家。
その屋根裏には、夫人の亡くなった夫のガラクタがあるという。
見てみると、ダンボール四つにぎっしり詰まった『アスタウンディング』誌が。
何気なく手に取った一冊に夢中になり、
そこに宣伝されているC・A・スミスの短篇集『十三の幻影』の通販を申し込んでみる。
すると、数十年前の出版社から……


こっちの方が好み(笑)
愛を感じます。


『魔法の眼鏡』もそうだったんだけど、
妻と離婚なり死別なりして、独り身になった主人公が向こう側に行っちゃう、てのが結構パターンなのかな。
今月号に載ってた『生家の裏庭』も家庭円満だけど、
妻と息子が旅行に出て、一人になったところから始まるし。


ちなみに、ブレイロックは日本ではスチームパンクの旗手みたいな紹介のされ方だけど、
スチームパンク自体は『ホムンクルス』しか書いてないそうだ。
カリフォルニアを舞台にしたファンタジーが多いとか。


トリビアというか豆知識。
世界幻想文学大賞のトロフィーはオスカー像ならぬ、ハワード像。
これはハワード・P・ラヴクラフトから。
彼の顔の像で、不評だとか(笑)