SEVEN STORIES

夜更けのエントロピー (奇想コレクション)

夜更けのエントロピー (奇想コレクション)

恥ずかしながら、現代のSF者として失格なことに、
ハイペリオン』シリーズは全く読んだことがございません。
あらすじも知らないに等しい。


でも、短篇はちょろちょろ読んでんだよね。


『夜更けのエントロピーダン・シモンズ河出書房新社)読了。


奇想コレクションシリーズ、第1巻。
『20世紀SFシリーズ』、カルヴィーノユイスマンスなどの文庫化に続いて、
こんな短編集シリーズを出してくれました。
アンソロジーとか短編集は、もう早川とかには期待しない方がいいね。


収録作品は
『黄泉の川が逆流する』
ベトナムランド優待券』
『ドラキュラの子供たち』
『夜更けのエントロピー
『ケリー・ダールを探して』
『最後のクラス写真』
バンコクに死す』


初訳は『ベトナムランド優待券』
近未来、ベトナム戦争をアトラクション化し、そこで観光客が当時の作戦などを追体験するのだ。
かつて参戦したアメリカ人の老人が、あるベトナム人の男と出会い……
参戦した者は心に今も傷を負い、
戦争を知らない世代は今も金で好き放題やってる。
裏アトラクションのゲリラ掃討作戦とか、実は本当にありそうな感じ。
ああいうトラウマがあるのに、アメリカは戦争大好きだからなぁ。


気に入ったのは
『最後のクラス写真』
大異変が起こり、世界中がゾンビで溢れた荒廃した世界。 
そこで、教育の望みを捨てず、子供のゾンビたち集めて授業を続ける老教師。
いつかはそれが実を結ぶ日が来ると信じているが……
何が起こったのかもわからないし、未来があるのかもわからない。
ただ、迫力があり、ラストは感動的。


バンコクに死す』
バンコクを訪れた主人公。
彼はラーマという女を捜していたが、訊くもの全てが怯えて話そうとしない。
彼は、20年前、ベトナム戦争中、一度バンコクを訪れていた。
そのとき、親友に、怪しげなショーに連れられていった。
そこにはラーマと呼ばれる人とは思えぬ女が究極の快楽を与えてくれる場所だった。
親友は、大金を払ってその相手になったのだが、彼は死体になって見つかる。
主人公はその復讐のためにラーマを探していたのだ。
その復讐の方法とは?
後味悪いし、男としては生理的にイヤ〜ンな話。


『ケリー・ダールを探して』や、ここには収録されていないけど、好きな作品の『ケンタウロスの死』も
教師と生徒の関係の物語なんだけど、なんでだろ、と思ったら、ダン・シモンズって教師やってたのね。


ダン・シモンズの作品は、「SFマガジン」に載ってれば、SFと思って読むんだけど、
それ以外だと、なんだろね、メインストリームじゃないけど、かといってSFって感じでもないんだよね。
奇妙な話って感じかな。